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ANTHROPOLOGIE(アンソロポロジー)事件

ANTHROPOLOGIE(アンソロポロジー)事件③

 前述のとおり、19号は、日本国内と外国の周知商標の双方について規定しています。
そして、外国の商標に関する典型事例として想定されているのは、「外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの。」(特許庁審査基準)です。
このように、買取りや代理店契約締結を要求されたという外形的事実があれば、話は単純です。しかし、本件においては、そのような事実はありません。

 
 従って、当方としては、「不正の目的を推認させる事実」の主張を積重ねるしかありません。
 もっとも、本件の場合、以下のように、不正の目的を強く推認させるような事実が現に存在しましたから、この要件についても、左程困難はないであろうと思われました。

 

  1. 「ANTHROPOLOGIE」は、日本語では「人類学」に対応する英語「Anthropology」を基本とし、語尾のみ「gie」と特徴を持たせたものである。結果として、フランス語及びドイツ語の「人類学」の正しい綴りに対応しているが、実は、米国での商標出願の際に、担当者が綴りを間違えてしまい、それが却ってユニークで面白いとして、そのまま使用されるに至った。そして、B社が登録したのは、まさに、この「ANTHROPOLOGIE」である。
  2. B社のウェブサイトに掲載されている会社沿革によれば、被請求人は、2003年1月、「海外ブランドの発掘を目的とし、米国ニューヨーク州に事務所を設立」し、2007年3月には、「アメリカに於けるカジュアルウェアのテストマーケティングの目的で、ニューヨーク州に現地法人を設立」している。本件登録商標の出願時、被請求人は、米国において盛んに服飾業界の調査活動等を行っていた。 他方、請求人は、「ANTHROPOLOGIE」のブランド名で、ニューヨーク州だけでも6店舗、2005年11月迄に、米国全体では73もの店舗を経営していた。同じ服飾業界に属し、米国内で調査活動を行っていたB社が、米国内で周知であったA社の商標を知らないはずはない。
  3. 本件商標を巡っては、上記のように、不正登録1→その不使用取消し→再度の先回り出願→登録料未納による出願却下処分、という背景事実が存在する。

 

 無論、B社の具体的な内心的意図は知る由もありません。が、このような事実に照らせば、A社による商標登録を困難にし、日本への参入を阻止する等、A社に損害を与える「不正の目的」によって、本件商標登録に及んだことは、合理的に推認することができ、当然、無効審決が下されるであろうと考えていました。

 
 ところが・・・
 

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