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What is claimed is の意味。

What is claimed is の意味。

 「特許請求の範囲」なる日本語はどうも変だと前から感じていました。

 

 英語では、「What is claimed is」です。簡略に、「クレーム」と言うこともあります。ここで、動詞claim は何を意味しているのだろうかと考えた結果、以下のことに思い至りました。

 

 この動詞claim は、to assert one’s right to or ownership ofであり、或るものについて自己の権利を主張する、特に所有権を主張することを意味します。空港には、baggage claim という場所がありますが、baggage claim とは、このbaggageは自分のものであると言って取りに行くことです。また、テロリストが犯行声明をするとき、claim responsibility というのも、この犯行は自分がしたものだと主張することです。

 

 従って、特許明細書において、「What is claimed is」とは、「自分のものとして所有権(権利)を主張する発明は次のとおり」ということを意味しています。

 

 翻って、この「What is claimed is」に対応する「特許請求の範囲」なる日本語を考えると、これが不適切な用語であることは明らかです。「~範囲」などという場違いな用語があるために、特許法の実務を知らない人が、「日本全国」と書いたりするのです。

 

 「What is claimed is」を日本語に置き換えるとき、当時の関係者が何か勘違いして、こんな珍語を思いついたに違いありません。

 

 「特許請求の範囲」なる日本語は不適切であり、「特許請求の対象」とか、「特許を請求する発明」という用語に変えるべきです。

 

 ところで、動詞claim の反対がdisclaimですが、この語は、アメリカ商標法のSection 6に、”The Comissioner may require the applicant to disclaim an unregistrable component of a mark otherwise registrable.”とあることに見られるように、商標の或る部分(普通名詞であることが多い。)について、 claimとは逆に、(「排他的)権利を要求しない」、ということを意味しています。

 

 なお、この「権利不要求」の制度は、日本の旧商標法にもありましたが、今では廃止されています。出願に係る商標は、全体として識別機能を有すると解すべきものですから、個々の構成要素に商標権の効力が及ばないことは当り前のことです。いまだにこの制度が存在し、真面目に適用している英米法のほうがおかしく遅れていると感じられます。

 

 (2004・9・17付記:「クレーム」は、ドイツ語では(patent)anspruch、フランス語ではrevendication です。いずれも、「権利の要求」ということで、英語の「クレーム」と同義です。「範囲」のような意味は含まれていません。日本でだけ、「範囲」という奇妙な語が含まれているのは、不可解というほかありません。なお、台湾はもと日本領だった名残か、「申請専利範囲」と称しています。しかし、中国では「権利要求」となっているので、「クレーム」そのものです。)

 

 (2004・10・5付記:台湾、中国での呼び方は分かったので、当然、次は、お隣の韓国では何と言っているのか知りたくなります。そこで、現地の提携事務所に問い合せたところ、韓国では、日本と全く同じで、まさに「特許請求の範囲」と称しているとのことです。あの、「小中華」をもって任じ「反日」を国是とする韓国がまさか?と思いますが、実は、これも「むべなるかな」なのです。何となれば、韓国の特許制度は、中国にはまだ特許制度がなかった頃、日本の特許制度を範として出来たものであるからです。)

 

 (2008・11・7付記:チャップリンの「黄金狂時代」(Gold Rush)という映画の中で、記憶を取り戻したビッグ・ジムが、金鉱の在り場所を思い出して、my claim ! my claim ! と叫ぶシーンがあります。この場合のclaimも、同じ意味と思われます。なお、当事務所に関する限り、「特許請求の範囲」なる用語は、不適切につき「使用禁止」としました。)

 

 (2014・1・8付記:正月休みに、60年前の懐かしい映画「シェーン」を見ていたら、英語の台詞の中に、my claim が二回出てきた。開拓農民が、土地からの追い出しを画策する相手に対して、「my claim から出ていけ!」と、「my claim は絶対譲り渡さない。」という場面だった。my claim とは、「私の所有地」という意味である。不動産と知的財産という対象の違いはあるが、どちらも、排他的所有権を主張する財産であることは同じである。)

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