「取締役社長」て何のこと?(装飾 ・改行スペース付き)
「取締役社長」て何のこと?
最近、委任状を必要とする案件は、拒絶査定不服審判、指定商品の書き換え、登録申請、訴訟等に限られるようになって幸いですが、これらについて、最近、依頼者からいただいた委任状の代表者の肩書きが、すべて「取締役社長」となっていたのにはガックリしました。
まだ出願に委任状が必要であった頃、「取締役社長」と肩書きのある委任状で商標出願したところ、「取締役社長」という肩書きでは代表権があるとは認められないとして、特許庁の方式で不受理とされ、問題の肩書きを「代表取締役」と直した委任状を提出し直したことがあったからです。
商法上、会社の代表権があるのは「代表取締役」であり、単なる「取締役」では代表権はありません。また、「社長」というのは俗世間の呼び方で、商法上、何の根拠もありません。
この程度のことは、敢えて「商法」という法律を持ち出すまでもないことではないかと思われるのですが、「取締役社長」という肩書きが依然として横行している現実を見ると、そうでもないようです。
会社の総務・法務部門には、大学の法学部を出た方がおられるであろうに、「取締役社長」等という肩書きで委任状に押印がされている現実を見ると、何とも情けない気分になります。
明治32年、「商法」という法律ができて103年が経っているのですが、この「取締役社長」というおかしな肩書きはしぶとく生き抜いて来たようで、これからも生き抜いて行くのでしょう。どうしてこういうことになるのか、不思議なことです。
なお、「取締役社長」という肩書きのある問題の委任状は、今回、そのまま提出して、特許庁がどう対応するか、様子を見ることにしました。
ちなみに、インターネット検索によると、「代表取締役社長」は約20万件、「取締役社長」は約4万件ヒットしました。「取締役社長」は約5分の1とはいえ、しぶとく[生存」しています。
(後日談: 結局、特許庁から、「取締役社長」については何のクレームも来ませんでした。あの「悪名高かった」特許庁の「方式」も、随分もの分かりが良くなったものです。「方式」より「中身、実質」のほうが大切ですから、結構なことだと思います。ちなみに、裁判所のほうは、従来から「取締役社長」は問題としておりません。)
(2002・10・4付記:9月19日には東京電力の「原発事故隠し」の、10月1日には全日空の「運航乗務員飲酒事件」の「お詫び広告」が新聞に出ました。ところが、どちらの場合も、代表者の肩書は「取締役社長」となっていました。両社ともに、この程度のこともちゃんとできない会社であることがばれてしまいました。)