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ふたつよいこと・・・

ふたつよいこと・・・


ふたつよいこと さてないものよ

これは、河合隼雄氏の「こころの処方箋」という本にあったものですが、「人間万事塞翁が馬」という格言と通じるものがあります。

「ひとつよいことがあると、ひとつ悪いことがあるのが普通としても、ふたつよいこともたまにはあり、ふたつよいことは、よほどの努力かよほどの幸運か、あるいは両者が重なったときに訪れてくるが、一般には努力も必要とはいうものの幸運によることが多いように思われる。幸運によって、ふたつよいことがあったときも、うぬぼれで自分の努力によって生じたと思う人は、次に同じくらいの努力で、ふたつよいことをせしめようとするが、そうはゆかず、今度はふたつわるいことを背負いこんで、こんなはずではなかったのにと、嘆いたりすることにもなる。」というくだりを読んで、日露戦争と大東亜戦争がまさにこれだと思いました。

日露戦争では、日本海海戦で海軍は完全勝利を得たばかりか、余勢をかって陸軍は樺太を占領し、講和会議で南樺太を割譲させることに成功しました。これは、まさに、ふたつよいことの適例です。しかし、この成果は、実は、日本が独力で勝ち取ったものではなく、英米が日本の肩を持ってくれたという幸運があってのことだったのに、日本は、独力で勝ち取ったと錯覚したのでした。

それから約40年後に大東亜戦争を戦った「三代目」たちは、国際的には通用しそうもない学校秀才ばかりで、戦争には惨敗し、国土は、元の木阿弥の4つの島に戻されてしまいました。文字通り、ふたつわるいことを背負いこみ、こんなはずではなかったと嘆く羽目になったのです。

話変わって、私事になりますが、昭和46年、特許庁をやめて弁理士になったとき、これで、「親方日の丸」も終わりで「自由業」になるのだと思うと、頭の中に、「自由のあるところに保障はなく、保障のあるところに自由はない。」という文句が浮かびました。これも「ふたつよいこと さてないものよ」の例です。

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