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民訴法119条にいう「告知」とは?

民訴法119条にいう「告知」とは?③

法律論としては、「決定及び命令は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。」と規定する、民訴法119条の解釈が問題となりました。

 

 「告知」とは、文字どおり、「告げて」「知らせる」或いは「知る」ことです。
 すなわち、「告」の裏には表示者が、「知」の裏には受領者の存在があり、両者が存在して初めて「告知」が成立するはずです。

 

 しかし、裁判所の論理によれば、「発送」したのみで「告知」が成立する、と言うのです。

 

 このような理屈が社会の一般常識に反するものであることは、火を見るより明らかでしょう。
 少なくとも、「発送しましたから告知は済んでいます。」等という理屈は、世間一般では到底通用しません。
 それが、裁判所であるが故に、特に、「最高裁判所」であるが故に許されるのだとすれば、それは極めて重要な、根本的な問題を内包しているのではないかと思えてなりません。
 国家の統治機構、公的機関は、本来、国民のためにこそ存在しているという視点が完全に欠落し、手段が自己目的化しているという現実です。

 

 このことは、調書の文面にも見事に表れています。
 「裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定。」とあり、助動詞の「する」すら省略され、正しい文章として完成させることもしていません。
 そして、「本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。」という紋切り型の、金太郎飴的な「理由」が、一言だけ、印籠のように記されています。
 あらゆる事件に適用可能な、見事な「例文判決」(井上薫著「裁判官の横着」)の一例です。
 さらに、ここにおいても、「民事訴訟法」と法令名を正確に記載することすらせず、「民訴法」と略語を用いています(我々が省略するときは、通常、「民事訴訟法(以下、「民訴法」とする。)」等と書きます)。
 定型文としてパソコンに保存したものを使い回しているのでしょうから、面倒なこと等何もないでしょうに。手抜き文書、ここに極まれり、です。このような究極の手抜き文書が「最高」裁判所から堂々と出され、それが常態化し、改めようという気配さえないのです。

 

 さらに重要なことは、上記のようなものは、決定を導いた「理由」とは言えないということです。
 「何故、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められないのか?」それこそが、当事者の関心事であり、当事者に対し明らかにされるべき実質的な「理由」です。
 そもそも、何故、「理由」が判決の必要的記載事項とされ、その欠如や食い違いが絶対的上告理由とされているかといえば、それは、判断の客観性を担保し、当事者を納得させ、以って司法に対する信頼を確保するためであるはずです。
 そうである以上、記されるべき「理由」とは、これら所期の目的を達するに足るようなものでなければならないはずです。
  しかし、「何故、そのように判断したのか。」という「理由」が示されなければ、判断の客観性を担保し、当事者を納得させること等、到底できるわけがなく、司法に対する不信と不満は募る一方です。
 これは、上告不受理決定であろうと同じことです。むしろ、そこで司法的救済の道が閉ざされるのですから、尚更というべきです。

 

 

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