戦争と「片づける」
戦争と「片づける」
今年は戦後70年目ということで、自然に、戦争関連の本を多く読むことになった。その中で、「片づける」という語に度々遭遇し、日本人にとって戦争とは、「国と国の間のもめ事を武力で片づけること」である、と分かった。しかし、終わってみれば、あの戦争できれいに片づけられたのは、日本軍なのであった。
① 日米開戦の約三カ月前、宮中での会話:
天皇:日米に事おこらば、陸軍としてはどれくらいの期間にて片づける確信であるか。
杉山参謀総長:南洋方面だけは三カ月で片づけるつもりであります。
天皇:杉山はシナ事変勃発当時の陸相である。あの時陸相として「事変は一カ月くらいにて
片づく」と申したように記憶している。しかし四カ年の長きにわたり、まだ片づかな
いではないか。
杉山:シナは奥地がひらけており、予定どおり作戦がうまくゆかなかったのであります。
天皇:シナは奥地が広いというなら、太平洋はなお広いではないか。いかなる確信があって
三カ月と申すのか。
杉山:絶句・・・
② 昭和16年12月9日、大本営海軍報道部長前田少将の談話:
「帝国海軍は、アメリカ主力艦の大半を一日で片づけてしまった。」
(これは全くの錯覚で、この3年8カ月後、帝国海軍の方が完全に片づけられてしまう運命にあるというのがおかしくて悲しい。)
③ 昭和20年8月、鈴木首相の言:
「終戦問題はこの内閣で片づけましょう。」
④ 「一下級将校の見た帝国陸軍」における山本七平氏の言:
「みずからを片づけた日本軍」、「バンザイ突撃は自分を片づけることであった。」