世の中が・・・
世の中が、自分に与えてよこす仕事を丹念に遂行する努力、それこそが人間における最大の生き甲斐ではなかろうか。
これは、谷沢永一氏の「人の世を見さだめる」という本にあったものですが、日下公人氏の名言(その4)の続きのような感じがします。依頼者から依頼された案件を、一件、一件、仕上げていくことを本質とする弁護士・弁理士のような職業には、ぴったりの格言です。実際、何度読んでも、この言葉には共感を覚えます。
これに続いて、「人間は仕事をするために生まれてきたのだと考えるのが、もっとも真当な人生認識ではなかろうか。・・・自分に仕事が与えられるのは、すなわち世間が自分に期待しているという意味である。世の中が自分を必要としているということを、はっきり手応えとして感じるとき、人は最も大きな喜びに浸る。そして我が能力の許すかぎり、仕事を十分に仕遂げてゆくなら、こちらから請求しなくても、より重要な仕事が向うの方からやってくる。当面の仕事をなおざりにすれば、いつまでも詰らぬ仕事しか来ないであろう。」とあります。この後半のほうは、「戒め」として肝に命ずべきことです。
なお、司馬遼太郎氏の作品のどこかにも、「人間という生きものは、どうやら、仕事をするために生まれてきたものらしい。」という文章があったことが記憶に残っているのですが、どこだったのか、思い出せずにいます。
司馬遼太郎氏と谷沢永一氏は、よく波長の合った友人関係にあったようですが、人生の基本認識においても、通じるものがあったようです。