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「均等論」とは。

~「均等論」とは。~

 特許法の「均等論」て何ですか、素人にはさっぱりわからないので、素人にもわかるように説明して下さい。

というリクエストがありましたので、かつては、自分自身も、法律では素人だったことを思い出して、説明してみましょう。

そういえば、私が特許庁で働いていた時、ちょうど法律学の勉強を始めた時でしょうか、刑法の考え方が特許法の考え方と通じるものがあるということを体得しました。
 


 

 刑法には「犯罪の構成要件」という重要な概念があり、特許法では「発明の構成要件」という概念があります。

刑事裁判においては、検察官は、被告人の行為について、犯罪の「構成要件該当性」を立証しなければならず、特許侵害裁判では、原告は、被告の行為について、発明の「構成要件充足性」を立証しなければなりません。

なお、特許侵害裁判で「構成要件該当性」というと、何やら、犯罪の議論をしているような気がするので、私は、発明の場合は、「構成要件充足性」ということにしております。
 


 

 さて、明治の刑法ができたとき、「窃盗罪」について、「財物を窃取したる者は~」と規定されておりました。従って、これが、窃盗罪の「構成要件」となります。

「財物」というからには、「有体物」を意味していることが明らかですが、やがて、「電気」というものが出現し、「電気」を盗む者が現われました。

「電気」は財産的価値があることは明らかですから、これを盗む者がいたら処罰したいとおもうのが当然です。一方、「電気」は一定の形を有する物ではありませんから、これを「財物」と呼ぶには、抵抗があります。 検察官が「電気」を盗んだ者を「窃盗罪」で起訴した事件は、当時の大審院まで争われ(明治36年)、「電気は可動性と管理可能性を有するから財物である。」として、有罪が確定したそうです。
 


 

 このような考え方が、特許法における「均等論」の考え方と共通しているのです。
「財物」についての「可動性」、「管理可能性」という要件も、何やら、従来の「均等論」で言われていた「置換可能性」、「置換容易性」の要件と似ています。

「均等論」がなぜ必要かといえば、被告が特許発明と全く同じことを実施しているという事案はむしろ少なく、実際には、特許発明とは少し違うやり方をしているのが普通であるという実態があるからです。
特許権者としては、実質的には同じことをしているではないかとして、特許侵害の主張をしたくなる場面が多いのです。

 しかし、従来の日本の特許裁判では、特許権者側の「均等論」の主張が認められることは大変難しく、「均等論」を主張しなければならないようなら訴訟には負けると覚悟しておいたほうがよい、というのが支配的風潮であったのです。
 


 

 従って、最高裁が、基本的に「均等論」を認容したということの意味は大変大きく、現実に、この最高裁判決以降の訴訟は、そこで示された指針に従って審理されているのです。

 


 

 では、「均等」の要件として最高裁が示したものとは・・・
 ①特許発明と異なる部分が発明の本質的部分に関係しないこと

 

 ②構成の一部を置き換えても特許発明と同じように機能すること
 ③構成の一部を置き換えることが容易であること
 ④被告の実施態様が従来技術のレベルを出ない(容易に考えられるものを含む)ものではないこと
 ⑤特許権者が意識的に権利範囲から除外したものでないこと

 

というものです。わかって貰えたでしょうか?

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