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15.弁理士会推奨明細書のおかしさ

15.弁理士会推奨明細書のおかしさ

(2014・12・2)

 

 最近、若い弁理士が増えたせいか、読んでいて違和感を感じる明細書に多く遭遇するようになった。問題は次の三点である。

 

 ① 請求項のすべてに「特徴とする」の記載がある。真にその発明の特徴なのか、単に限定しているだけなのかの区別なく、機械的に「特徴とする」と書いているらしい。

 

 ② 従属項における主語を表わす助詞が、すべて「は」になっている。そのような書き方をすると、そもそも、日本語としておかしい、ということを感じ取る感性もないようである。

 

 ③ 請求項で頻出する「そなえる」が、漢字で「備える」と書かれている。

 

 以上のような違和感のある明細書は、台湾からの出願依頼でも同じであるので、これは、何か根拠があるに違いない、と思って調べてみたところ、弁理士会の研修で用いられているテキストがそうであるらしいことが分かった。
 上記①と②の問題については、既にこのコラムで論じているので、省略するとして、③については、「具える」の方が適切である。このことは、備と具の使われ方を対比すると分かる。備は、守備、防備、備蓄のように、「心配のないように用意する」という文脈で使われるのに対し、具の方は、具有、具体、具現のように、「ある、持っている」の意味合いであるからである。英語で言うと、前者は、prepare, provide, furnish であり、後者は、comprise である。請求項での「そなえる」は、comprise の意味であるから、「具える」の方が適切なのである。
 ちなみに、明細書中での「備える」、「具える」、「そなえる」の使用頻度を調べてみると、97.8%, 1.9%, 0.3% という結果であった。何故、このような偏った結果になるか?というと、ここでも、政府が関与している「常用漢字表」の絶大な影響が認められる。この表では、備には「そなえる」という読み方が示されているのに、具には「そなえる」という読み方は示されていない。「そなえる」は、漢字では、すべて、「備える」と書けと、言わば、お上が命令している。

 

 しかし、今や、文書作成はワープロの時代。「常用漢字表」如きに拘束されるいわれはない。「そなえる」とひらがなで書くか、漢字なら、「具える」と書きたい。

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