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不思議な優先権証明書。

不思議な優先権証明書。

 日本国特許庁から発行される優先権証明書の証明文言は、国際化時代でもあり、日本語と英語の両方で書かれており、英文では、「This is to certify that the annexed is a true copy of the following application as filed with this Office.」となっています。これは、国際的に共通の証明文言であり、これに対応する正しい日本語は、「ここに添付したものは、当局に提出された下記の出願の真正な写しであることを証明する。」になるはずです。

 ところが、実際にある日本文は、「別紙添付の書類に記載されている事項は下記の出願書類に記載されている事項と同一であることを証明する。」です。従って、英文と日本文は、意味が同じでないことが明らかです。

 かつて、手書きの明細書で早い出願日を確保しておいて、後日、和文タイプした明細書を提出するということが行なわれていましたが、優先権証明の申請書に、手書きでなく和文タイプした明細書を添付したところ、当初の出願は手書き明細書でなされているのだから、和文タイプした明細書では優先権証明書は出せないと言われたことがあります。しかし、前記特許庁の証明文言に従うなら、内容が同一でありさえすれば、和文タイプした明細書で優先権証明は出せるはずです。ただ、内容が同一かどうかを判定するのが面倒だからという理由で、証明を拒絶したとしか思えません。

 「優先権証明書」は、英語ではcertified copyというくらいですから、出願当初のコピーそのものが添付されていることが重要なのです。そういう意味では、特許庁が和文タイプした明細書では優先権証明書は出せないといったのは正しいわけです。

 ところが、この国の特許庁が現実に出す優先権証明書には、末尾に、2頁として「認定・付加情報」なるものと「出願人履歴情報」という書類が添付されます。しかし、これらの頁は出願人が特許庁に提出したものでないことは明らかで、出願人の与り知らない特許庁の都合で添付されているにすぎません。これらの余計な書類が付加されることにより、英文の「a true copy」と整合性がなくなっています。

 しかも、優先権証明書の全文訳を要求する国については、ご丁寧にも、これらの書類の英訳まで添付する人が出てくる始末です。

 私共は、これらの末尾2頁は優先権と関係がないことが分かっていますから、優先権証明書の全文訳を要求する国については、これらの頁は引っ剥がすことにしています。

 特許庁は、優先権証明書にこのような無意味な頁を添付することを止めるべきであり、日本語の証明文は、英文と一致させるべきであると思います。

 (2003・5・30付記:最近、特許を受けた後、異議申立に基づき、取消理由通知があったため、訂正請求をする際、特許証の文言にも、優先権証明書と同様、おかしなことがあるのに気付きました。

 特許証に、「この発明は、特許するものと確定し、特許原簿に登録されたことを証する。」とあるのがおかしいのです。何故なら、特許証が発行された段階では、まだ異議申立により特許が取消される可能性が残っていることは明らかなので、「特許するものと確定していない」からです。特許が「確定」するのは、異議申立がなかったか、異議申立にも拘らず「特許維持決定」がなされた場合のことです。特許証に、どうしてこういう変なことが書かれるのか、不思議です。

 なお、上記の文章は、英文では「This is to certify that the patent is registered on the register of the Japan Patent Office.」と表示されており、これまた、明らかに、日本文と対応していません。英文には「確定」の語がなく、主語も一致していません。)

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