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maintenance

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特許明細書案文に、正しく、「メインテナンス」と書いていたところ、会社の特許担当者に「メンテナンス」と直されてしまいました。「お客様は神様」なので、その場は、おとなしく引き下がりましたが、「真相はこうだ!」というのが、以下の調査結果です。

 

 この場合、英語を意識しているなら、「メインテナンス」が当然なのに、何故、「メンテナンス」になってしまうのか?が疑問となります。

 

 この「maintenance」は、フランス語でもスペルは同じです。フランス語では 、「main」(意味は「手」)は「メン」と発音するので、「メンテナンス」は、フランス語の発音に引きずられた可能性があります。しかし、後半の「tenance 」は、フランス語では「テナンス」ではなく、「テノォーンス」に近いので、結局、「メンテナンス」はフランス語の発音どおりではありません。

 

 そうすると、「メンテナンス」はフランス語の発音を記したものでもなく、英語でもない、というどっちつかずの正体不明なものになります。結局、日本独自の変な発音を記したものになってしまっています。

 

 国語辞典を調べてみると、広辞苑が「メンテナンス」しか登載せず、明らかに手抜きをしているのに対し、大辞林では、「メインテナンス」も登載され、「メンテナンス」を見よ、と表示されています。

 

 英語が国際語であることは、今や何人も否定できない事実です。英語を意識して、「メインテナンス」の方を復活させるべきです。

 

weblioで発音を聴く。(リンク先のスピーカボタンをクリック。)

 

(2014・11・7付記)
 上記「maintenance」の他にも、英語の二重母音が、いい加減に発音(表記)されているものが多数あるので、この際、総点検してみることにした。

 

① maintenanceと同じように、二重母音【ei】が「エ」と短くなってしまっているものに、changeやrangeがある。それぞれ、「チェンジ」、「レンジ」として、既に日本語になっている観がある。しかし、正しくは、「チェインジ」、「レインジ」である。特許明細書の中で、chainを「チェン」と書いているものに出くわすことがあるが、これは、maintenance等と同様に、【ei】の二重母音を「エ」と短くしたのであり、「チェンジ」と同じことである。

 

② 次に、圧倒的に数が多いのが、長音「エー」で発音・表記されるものである。make, cake, mail, game等、枚挙にいとまがない。chainも「チェーン」となる。「チェーン・ストア」のように、一般的用語にもなっている。何故こうなるのか?その疑問を解く鍵として、平成3年に告示された文科省の「外来語の表記(内閣告示第二号)」なるものがあることが分かった。この前書きには、「「外来語の表記」のよりどころを示すもの」とする断りがありつつも、「長音は、原則として長音符号「ー」を用いて書く。」との記載がある。そして、その例に、堂々と「ゲーム」が記載されている。Gameは二重母音であって、長音ではない。しかし、この原則から言えば、makeはメーク、cakeはケーキ、アルファベットのAまでも、「エー」と表記することになり、多くのカタカナ表記がこの告示の影響を受けていることが分かる。権威に弱い出版業界等がこの告示に迎合したためであろう。なお、この告示では、例外として、eight(エイト), paint(ペイント), layout(レイアウト), Spain(スペイン)等を挙げているが、本来はこちらが正しい表記で、例外ではない。「原則と例外」が分かっていない。

 

③ 最後は、スペルを見て、勝手に発音・表記していると思われるグル―プで、image, damage, manage, sausage等がある。これらは、語尾にageがつくためか、日本では、全て「○○エージ」と表記され、エージのエの部分にアクセントがあるように発音される。Mortgageの場合は、「モーゲージ」となり、社名に取込んでいる会社まである。しかし、本来の発音は、全て第一母音にアクセントがあり、ageの部分は【idz】と発音される。(しかし、advantage は例外で、テニスでは「アドヴァンテイジ」と発音される。)なお、private が「プライベート」となるのも、同様に、語尾のate に引き摺られているのであろう。

 

 国際語としての英語の重要性は、増す一方である。普段から、正しい英語の発音・表記をする方が望ましいのは明らかである。

 

 なお、特許庁では、「願書の「【住所又は居所】」の欄への住所又は居所の記載について」で、「在外者の住所については、行政区画順に原語表音をカタカナ文字で表示します。」としている。上記告示等無視して、この方式が、一般にも拡がるべきである。

 

 ちなみに、特許庁の公報テキスト検索で、明細書では、chainがどのように表記されているか、「チェーン」、「チェン」、及び正しい英語の発音に近い「チェイン」で比較したところ、それぞれ、85.7%、10.7%、3.6%という、興味深い結果であった。珍表記「チェン」が1割強をも占め、「チェイン」がその三分の一というのがお笑いであった。

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