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コラムCOLUMN

PATENT AttorneY(日本弁理士会広報誌)



 (本稿は2002年1月に最初に発表し、その後、付記を重ねてきたものですが、2003年5月2日付けをもって全面的に改訂します。)

 弁理士会が、以前からPATENT AttorneY(パテント・アトーニー)という表題の広報誌を発行しています。(画像は最新版の表紙です。)しかし、この「アトーニー」というのは、前から気になっています。

 Attorneyの正しい発音は「アターニー」であり「アトーニー」ではないからです。この冊子は、「広報誌」という以上、受験勉強中の中高生達の目にふれることもあるでしょうが、そうすれば、彼らにも笑われてしまいそうな「アトーニー」です。(下記のリンクから発音を聞くことができます。)

 もっとも、このAttorneyにおける「アー」の音は、日本語には本来存在しない、曖昧音の「アー」であり、work,word,world等における「アー」と同じ音です。「ワーク」、「ワード」、「ワールド」は、日本語としても定着している(「ハローワーク」、ワープロソフトの「ワード」、あの「ワールド・トレード・センター」の如し。)のに、「アターニー」が定着しないのは何故なのでしょう。一般人とは縁のない用語なので、いわゆる「業界語」として、「アトーニー」になってしまったのでしょうか?もっとも、[wor]が含まれる英単語には、swordもあり、ここでは、意外にも、「ソード」と発音しますから、英語の発音の不規則性には困ったものですが、日本人が文句をいっても始まりません。英語を作った人々に従うしかありません。

 現実に、この業界の人々の中には、Attorneyは「アトーニー」と発音するのだ、と思い込んでいる人が実に多いようです。そうであるが故に、広報誌のタイトルに、何の疑問もなく、「アトーニー」と表示したりしてしまうのでしょう。(現に、或る先生が堂々と人前で「アトーニー」と発音されるのを聞いたことがあります。)弁護士も、例外ではありません。なお、念の為にとチェックしてみたら、元特許庁長官の荒井寿光氏が書かれた「特許戦略時代」の92頁にも、「パテント・アトーニー」とあります。こんな偉い人が「パテント・アトーニー」といわれるようでは、後は推して知るべしです。

 この国は「学歴信仰」の国ですから、東大法学部まで出た人が「アトーニー」というのなら、それが正しいことになってしまうのでしょう。しかし、こんなことは、辞書で発音記号を確認しさえすれば直ちに判明することであるし、ネイティブが実際にどう発音しているかを自分の耳で確認すればすむことです。要するに、このような確認作業を一切しない人、すなわち、自分の頭で考えない人が、「アトーニー」と言い続けているわけです。

 しかし、今からでも遅くありませんから、弁理士会には、Attorneyの発音は「アターニー」であることを徹底させるべく、(パテント・アターニー)と表記されることをおすすめします。ずーっと(アトーニー)が正しいと信じて来たので、「いまさら・・・」と言われるのなら、(パテント・アトーニー)なる表記は削除して、かたかなでは一切表示しないのが、むしろ望ましいのではないでしょうか?

 なお、蛇足かも知れませんが、Attorneyとは、英語では、本来、弁護士資格を有する者を意味しているようですから、弁護士ではない日本の「弁理士」は、英語ではpatent agentと表記するのが妥当のように思えます。

 さて、以下は、インターネット検索で判明したことです。

 「アトーニー」で検索したところ、元自民党幹事長加藤紘一氏の講演記録が出てきました。その中で、彼も「アトーニー」と言っています。この人こそ、「アトーニー」派のトップの著名人でしょう。東大法学部を出、ハーバードの修士課程に留学し、外交官までした人が「アトーニー」とは、いやはや、何とも・・・

  数の面では、「アトーニー」は約230件ヒットしますが、「アターニー」は約10しかありません。弁護士、弁理士、国会議員、官僚・・・すべて「アトーニー」派のようです。「パテント・アトーニー」と「パテント・アターニー」で調べると、何と146対3と差は開きます。特許業界での汚染のひどさが分かろうというものです。もっとも、最重要語の一つとも言うべき「クレーム」に「特許請求の範囲」という変な日本語をあてた業界ですから、不思議はないのかも知れません。
 正しく「アターニー」と記していたのは、司法書士のグループでした。

 ちなみに、インターネットには、「英単語五七五記憶術」と称するホームページがあって、「アトーニー」を、「この俺の後に弁護士付いている。」という五七五で覚えさせようとしています。受験生向けのホームページなのでしょうが、嘘の発音を教えているわけで、困ったものです。

 今のところ、「アターニー」派は、数の上では圧倒的に劣勢ですが、「アターニー」が正しく、「アトーニー」は間違いであることが明らかですから、何時の日か、「アトーニー」が駆逐され消えてなくなることを願っています。

 こういう変な発音がどうして根付いてしまったのか、さらに、調べてみることにしました。

 まず、「東京大学出版会」から出ている立派な「英米法辞典」のAttorneyのところに、「アトーニ」とありました。日本を代表する大学で英米法を専門に講じている先生方が「アトーニ」と言っているのですから、「アトーニー」派が圧倒的に多くなるわけです。

 さらに、田中英夫著「英米法総論」と、今の「英米法辞典」の前身とおもわれる(編集代表田中英夫)「BASIC英米法辞典」(いずれも「東京大学出版会発行」)もチェックしたところ、「英米法総論」には「アトーニ」が頻出し、「BASIC英米法辞典」にも「アトーニ」があります。
「アトーニー」ウィルスの発生源は、「東大法学部」に間違いないようです。

 一方、2001年出版の三省堂「知的財産権辞典」には、「アターニー」となっていました。印刷物で「アターニー」を見付けたのは初めてです。「アターニー」派に強力な味方ができた思いです。執筆者の顔触れを見ると、東大法学部の出身者が極めて少なく、これが幸いしたようです。

 ところで、法律家(弁護士)のことは、英語でlawyerともいいますが、これを「ロイヤー」と書く人がいるのにも納得できません。Googleで「ロイヤー」を検索すると2700件も出てきます。多分、阿川尚之氏の中公新書「アメリカン・ロイヤーの誕生」という本が、この「ロイヤー」なる言い方のサポートになっているのではないかと思われます。しかし、lawyerは、law(ロー)とyerが結合しているのですから、かたかなで書くのなら、「ローヤー」のほうが正しいはずで、現に、ネイティブもそう発音しています。
lawyerの発音をweblioで聴く。(リンク先のスピーカマークをクリック。)

 英米の大学に留学し、ネイティブ達に囲まれて勉強してきたはずのエリート達が正しい発音を身につけないまま帰って来るのは、言語を、耳からでなく、目(活字)からのみ学ぼうとする日本人特有の習性のためではないかと思われます。


 なお、「PATENT Attorney」の表題の横に登録商標である旨の表示がしてあるので、特許庁電子図書館でサーチしたところ、登録第4079275号として存在していました。しかし、このかたかな版は登録されていません。

 このように、英語表示のままで商標が登録されている場合、日本語、すなわち、かたかなで称呼(読み方)が判明していないとサーチできませんから、特許庁は、ご親切に、かたかなで称呼を付与するわけですが、案の定、この称呼欄には「パテントアトーニー」となっていました。国家の機関である特許庁が、間違った発音に「お墨付き」を与えているのですから、困ったものです。

(2003・1・23付記):
 1月22日の日経夕刊に、「米ファイザー ひげそりのシック売却」という記事がありました。その中で、シック・ウイルキンソン・スウォードなる会社名があったので、何か変だと感じ、調べたところ、Schick Wilkinson Swordのことでした。この記事を書いた記者は、swordの発音は「スウォード」だとおもっているのです。なお、日経新聞社は「インターネット・アワード」(キリンビール社は「キリン・アワード」)なる珍妙な名前の賞を提供しています。日経新聞社は、社員の英語力を高めて、このような恥をかかないようにしたほうがいいのではないかと思います。ところで、awardを「アワード」と発音する人たち(wardrobeはワードローブとなる。)は、war(戦争)という単語を見たら、「ワー」と発音するのでしょうか?

(2004・6・15付記):
 教育テレビで「ビジネス英会話」という番組がありますが、何と、その中でも「アトーニー」なる発音がまかり通っていました。教育を目的とするテレビ番組までが「アトーニー」とは情けない限りです。

(2004・9・10付記):
 同じ三省堂発行なのに、2003年12月20日発行の「コンサイス 法律学用語辞典」では「アトーニ」に戻ってしまいました。自分の頭で考えることのできない人達が、東大出版会のものをそのまま引き写したのでしょう。

(2005・4・15付記):
 2004年の冬号に「来春号より紙面をリニューアル致します。ご期待ください。」とあったので、ひょっとしたら「アトーニー」も「アターニー」に直るか?と期待しましたが、甘かった!表紙にある「パテント・アトーニー」のかたかなは随分小さくなったものの、しぶとく生き延びました。この「アトーニー」という言い方は、明治以来、数世代かけて定着し、言わば、この業界人の遺伝子に組込まれ「空気」になってしまっている感があるので、これが「アターニー」に替わるには、後、数世代かかるのかも知れません。一方、電子辞書の技術革新は一層進み、ネイティブの発音が聴けるものが出てきました。そこで、このホームページでも、クリックすればネイティブの発音が聴けるようにしたいと思っています。
weblioで発音を聴く。(リンク先のスピーカマークをクリック。)

(2005・10・4付記):
 日本語ペラペラの韓国弁理士が事務所訪問に来たので、冗談半分に、attorneyを何と発音するかと聞いたところ、「アトーニー」と答えたのには吃驚しました。「アトーニーウィルス」は朝鮮半島まで汚染していたのでした。

(2013・9・3付記):
 アメリカの大学への留学体験を誇る韓国弁理士が来所しました。「アト―二―」を連発していました。

(2006・9・22付記):
 電車の中吊りに「トム・ソーヤーの冒険」とあるのが目にとまりました。「トム・ソーヤー」のスペルはTom Sawyerなので、Sawyerの部分が、Lawyerとそっくりであることが分かります。しかし、「トム・ソーヤー」を「トム・ソイヤー」と言う人はいません。従って、Lawyerは「ローヤー」なのであって、「ロイヤー」ではないのです。しかし、最近では、「法律事務所ホーム・ロイヤーズ」等という名前の法律事務所まで現われる始末で、「ロイヤー」なる言い方が次第にはびこって来ているのが現実です。

(2014・1・21付記):
 以前、Lawyer’s magazine と称していた雑誌が、最近、Attorney’s magazine とタイトルを変更した。しかし、その日本語表示を見ると、「アトーニーズマガジン」となっている。巻頭言に相当する箇所は、「アトーニーズ・オピニオン」だそうである。この業界の人は、一般的に知的レベルは高く、英語を使って国際的に活動している人も多いであろうに、Attorney=アトーニーとなってしまうのは、不可解というほかはない。

(2015・7・21付記):
 東京裁判の映画を見ていたら、裁判長が弁護人に発言を許すときは、Attorney Blakeney というように名を呼んでいた。
 日本人の面前で、native が attorney の発音をきかせてくれた、稀な機会であった。しかし、attorney の正しい発音を、この国に定着させる効果は皆無だったようである。




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